当博物館が芸術活動の一環として、取り組んでおりますこの「未来心の丘(みらいしんのおか)」は、広さ5,000平方メートルにもおよぶ白い大理石の庭園で、世界を舞台に活躍されている彫刻家 杭谷一東(くえたにいっとう) 氏にその制作を依頼しているものです。
ここに使用されている大理石のすべては氏のアトリエ(仕事場)があるイタリア・カッラーラで採掘し、コンテナ船で運んできています。丘にそびえ立つ大小様々な形をしたモニュメントや広場、道... 氏は制作に当たっては常に、その石のひとつひとつと対話し、また周囲の景色の形や色、風雨、光といったあらゆる自然との調和(バランス)も考えて創造してこられました。
ここでは、ただ見て楽しむだけでなく、実際に肌でふれて、自然と一体となって遊び、思い思いの想像をふくらませてもらえることが氏の願いでもあります。言いかえれば、未来心の丘は、すべての生命あるものが参加できる空間といえます。
1942年 | 広島県世羅郡字津戸に生まれる |
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1957年 | 彫刻家 圓鍔勝三氏に師事 |
1962年 | 日展初入選 以後連続8回入選 |
1971年 | イタリア国立アカデミー卒業 最優秀ミネルヴァ賞を受賞 |
1974年 | ファッツィーニ教授の助手としてヴァチカン宮殿謁見の間の「キリストの復活」制作に参加 |
1980年 | イタリア・マリーノ市国際石彫ビエンナーレで大賞受賞 |
1983年 | 広島平和記念資料館に「平和アピール碑」制作 |
1990年 | ヴァチカン宮殿にてローマ法王ヨハネ・パウロ二世に謁見 広島県世羅町 藤原眼科「大地の鼓動」制作 |
1992年 | 広島県福山市 福山城公園に「水の城」制作 |
1994年 | 府中市体育館ウッドアリーナの「共生」制作 |
1995年 | 千代田区いきいきプラザ一番町に「共生」制作 |
2000年 | 耕三寺博物館 巍々園の未来心の丘第一期オープン |
2005年 | THE MARBLE ARCHITECTUAL AWARDS 2005 都市景観部門で大賞(1st Prize)受賞 -耕三寺博物館 未来心の丘制作として- |
2009年 | イタリア・ローマ古代遺跡にて個展「白い息吹 歴史の風」開催 |
2010年 | M-a-M賞(巨匠による伝承賞)をフィレンツェ市から受賞 |
2014年 | 安田学園創立100周年記念モニュメント「まほろばの標」制作 |
2016年 | 広島県世羅町 世羅シンボルモニュメント「天地花」制作 |
2021年 | 中国文化賞 受賞 |
2024年 | 広島県地域文化功労者表彰 広島県尾道市 尾道駅「未来門」制作 |
去る6月にイタリア・カッラーラ(現地)で行われた授賞式での様子
MAA2005のアーバンランドスケープ部門での大賞を受賞して大プロジェクトの受賞作品のなか、耕三寺と杭谷氏との二人三脚のような小さなプロジェクトが取り上げられたことは感激に堪えません。それだけイタリアにおいて注目されていることを示すもので、現地での授賞式に参加し、あらためて肌に感じてきました。杭谷氏の情熱が形となり文化国家イタリアにおいて認められたことをお祝いいたします。当館としては、地域が誇れる造形作品として、また未来に希望をつなぐ場所として今後とも愛情を込めて維持管理していこうと思います。
MARBLE ARCHITECTURAL AWARDS 2005(マーブル・アーキテクチュアル・アワード 2005)は、「イタリア貿易振興会」と「カラーラ国際石材及び加工機械」が6年に1度開催しているコンペティションです。
この賞の目的は天然石の特性を生かした素晴らしい建築物、デザイン、プロジェクトを世界各地から募り、アーバン・ランドスケープ部門、インテリア部門、エクステリア部門の3部門において厳選し称賛することです。
今回、杭谷一東は「未来心の丘」(耕三寺博物館)の制作者としてアーバン・ランドスケープ(都市景観)部門の大賞(1st Prize)を受賞しました。杭谷一東は環境彫刻の制作をライフワークとしてきました。「未来心の丘」は世界最大規模の大理石彫刻庭園として構想から5年、着工から12年の歳月をかけて制作したものです。今回の受賞は、「未来心の丘」が都市景観創造の観点からも世界的に高い評価を受けたことを意味します。
- 耕三寺博物館
ローマから、アドリア海に面したブリンディシまで約750kmを結ぶ道―アッピア街道―。
「すべての道はローマに通ず」と呼ばれた古代ローマへの道の中でも「街道の女王」と呼ばれ、最も重要な街道です。その古代遺跡群はイタリア国有でローマの考古学監督局管理下にあります。
これまで、この古代遺跡群における展覧会は例を見ないこととされてきましたが、環境彫刻家・杭谷一東(くえたに かずと)のイタリアにおける環境彫刻への取り組みが認められ、イタリア文化財・文化活動賞ローマ考古学監督局から正式に許可を得る運びとなりました。加えて、この環境彫刻展がアッピア街道の歴史的価値を高める機会として、成功を納めることができるよう、建築・現代美術総局へ働きかけをしていただいております。
この国際的・歴史的な試みが、実現に向かって歩み始めています。