夏季常設展2011 解説
 仏像の姿形・作られ方は時代によって大きく変わりますが、印相(手の形)には決められた法則があります。そこでここでは、夏季常設展1階部に展示している仏像の印相について簡単ご紹介します。
 仏教の始祖・釈迦の姿を表した釈迦如来立像は、胸辺りで掌を前に向けた右手(施無畏印《せむいいん》)と、下に垂らして何かを与えようとするような仕草の左手(与願印《よがんいん》)を併せた印相を持っており、信者たちの願いを叶えるという意志を示しています。また薬師如来坐像もこの印相です。ただ、坐像ゆえに左手を膝の上に置き、薬壺を持っているのが特徴で、病苦の人々を救うという意志を表しています。
 もう一つ特徴的な印相を持つ仏像が阿弥陀如来立像です。右手左手ともに親指と人さし指で輪を作り、右手を胸の前に、左手を下に垂らしており、上品下生印《じょうぼんげしょういん》と言います。また、信者の臨終に際して極楽浄土から迎えに来る時の印相であることから、来迎印《らいごういん》とも呼ばれます。
 少し珍しい印相をしているのが宝冠阿弥陀如来坐像です。阿弥陀如来坐像は親指と人差し指で輪を作って左右の手を重ねるのが普通ですが、この像は輪を作らずに左右の手を重ねています。大日如来坐像などで多く見られるこの印相は禅定印と呼ばれるもので、阿弥陀如来坐像のなかでも宝冠付きの像でしばしば見られます。
 幾つかの印相をご紹介しましたが、それらは各仏様の本願(誓い)を表しています。手が口ほどに物を言う仏様の姿にもご注目いただければ幸いです。
 続く今常設展2階部では、百鬼夜行図帖北野天神縁起絵巻など、“もののけ”・怨霊といった異界の住人たちを描いた品を中心に展示しています。
 寛政12年(1800年)に描かれた百鬼夜行図帖には、赤鬼・青鬼、傘に琵琶などなど、多くの“もののけ”が登場します。「百鬼」と聞けば怖いイメージも湧いてきますが、実際に見てみるとそのイメージが見事に覆されます。頭に鍋のふたをのせて走る赤鬼、後ろを振り向いてハッとした表情の蛙妖怪などはどこか間の抜けた感じです。百鬼夜行図帖は数百年前の人々の豊かな想像力とユーモアが強く感じられる品と言えるでしょう。
 また北野天神縁起絵巻は、数ある縁起絵巻の類のなかでも名の知れたものの一つです。耕三寺博物館で所蔵する北野天神縁起絵巻は弘安年間(13世紀後期)に描かれた絵巻(北野天神縁起絵巻・弘安本)を模写したものと思われますが、省略箇所が多くあり、コンパクト化されているのが特徴です。ここでは、菅原道真が雷神と化して清涼殿に現れる場面をご覧いただけます。
 さらにこの度は尾道市立瀬戸田小学校のご協力を得て、昨年度の6年生が描いた現代版百鬼夜行図も展示しております。耕三寺博物館での作品鑑賞から同図の制作に至る過程の一部もご紹介しておりますので、現代の子供たちの想像力とユーモアを感じていただければ幸いです。
 異界の住人たちをどのように表現するか。最も想像力を必要とするであろうこの難題に立ち向かった各時代の人々の試行錯誤の跡を感じていただければ幸いです。

夏季常設展2011 展示目録
作品名形状指定時代
梵鐘銅造重要美術品室町時代
釈迦如来立像木造重要文化財平安時代
薬師如来坐像銅造彩色重要文化財鎌倉時代
宝冠阿弥陀如来坐像木造漆箔重要文化財鎌倉時代
阿弥陀如来立像木造漆箔重要美術品鎌倉時代
阿弥陀如来立像木造截金彩色重要文化財鎌倉時代
浄土曼陀羅刻出龕木造截金重要文化財平安時代
地蔵菩薩立像木造彩色鎌倉時代
増長天立像木造平安時代
持国天立像木造平安時代
阿弥陀三尊像木造漆箔鎌倉時代末期〜南北朝時代
狛犬木造鎌倉時代
百鬼夜行図帳紙本着色江戸時代後期
雪堂鬼画紙本着色大正〜昭和
北野天神縁起絵巻紙本着色室町時代中期
伊東陶山作《色絵お伽人形》磁器色絵明治〜大正
平櫛田中作《鏡》木造昭和前期
特別展示
2010年度瀬戸田小学校6年生制作 現代版百鬼夜行図