今常設展では1階部に木造仏を中心とした11点を、2階部に仏教美術品を主とした24点を出品しています。展示品の全てをご紹介するのが本意ではありますが、紙面の制約もありますので、ここでは数点を抜粋してご紹介します。
 1階で展示している仏像のうち、釈迦如来立像は三重県・神宮寺に伝わったもので、宝冠阿弥陀如来坐像は伊豆走湯山常行堂の本尊だったものです。他の仏像も耕三寺が建立される以前から存在していたものばかりで、それぞれがどこかの寺院などに安置されていたことは間違いありません。なかには数百年に亘って信仰の対象となっていたものもありますが、それらがなぜいま耕三寺に蔵されているのか。その理由の大きなものは明治時代に断行された廃仏毀釈にあります。この政策を機に経済的に困窮した寺院は多くあり、秀逸な仏像でさえ競売にかけられることが頻繁に起こっていました。
 今展で展示している仏像は耕三寺初代住職・耕三寺耕三が戦前・戦後に蒐集したものが中心ですが、明治時代に諸寺院から流出した仏像が巡り巡って耕三寺に辿り着いたと言うこともできます。
 つづいて2階に展示する品々に目をやると、形状が「銅製鍍金」となっているものが多くあります。「鍍金」とは金属の表面を他の金属の薄い膜で覆うことを言い、“メッキ”と読むこともできます。ただ、ここにある「鍍金」は“ときん”と読み、金属の表面を金の膜で覆う技法を指します。つまり「銅製鍍金」とは、銅で作られたものを薄い金の膜で覆っているということで、有名な作例としては奈良の大仏を挙げることができます。一般的にある物を金で覆う場合、金属製品には鍍金が、木製品その他には漆箔(金箔を漆で貼り付ける技法)が用いられます。
 さて、展示品の小刀子を見ると一部が緑色に変色していることが分かります。これはいわゆるサビで、鍍金の傷んだところから発生しています。鍍金には下地金属の表面を保護する効果があるようです。また透彫尾長鳥宝相華唐草文華鬘を見ると、非常に細かな透かし彫りを施したうえに鍍金処理をすることで荘厳な雰囲気が醸し出されています。黄金色で覆うことによって装飾性を増すことが鍍金の最大の効果と言えるでしょう。
 最後に、目線を変えて曽我二直庵作《松梅鷹図屏風》を紹介します。曽我二直庵は江戸時代初期に近畿地方で活躍した画家です。《松梅鷹図屏風》では、画面全体に貼られた金箔の上に鷹と松・梅が描かれていますが、鷹の羽毛の模様や松・梅の枝ぶりの描き方からは強いデザイン性が感じられます。
 展示品の中から数点を紹介しましたが、これら以外も一見の価値があるものばかりです。とくに梵鐘などは寺社に奉納されたいきさつが記されており、当時の人々の信仰心をよく伝えていますし、阿弥陀如来立像及び胎内文書からは故人の冥福を祈る家族の想いが強く感じられます。日本文化の核の一つと言っても過言ではない仏教。それらに関わる数々の文化財は、かつての人々の信仰・想い・美的感覚などを現在に伝えるものばかりです。わずかばかりではありますが日本文化の一端をお感じいただければ幸いです。どうぞごゆっくりご鑑賞ください。

冬期常設展2010 展示目録
作 品 名 形 状 指 定 時 代
梵鐘 銅造 重要美術品 室町時代
釈迦如来立像 木造 重要文化財 平安時代
薬師如来坐像 銅造彩色 重要文化財 鎌倉時代
宝冠阿弥陀如来坐像 木造漆箔 重要文化財 鎌倉時代
阿弥陀如来立像 木造漆箔 重要美術品 鎌倉時代
阿弥陀如来立像 木造截金彩色 重要文化財 鎌倉時代
浄土曼陀羅刻出龕 木造截金 重要文化財 平安時代
地蔵菩薩立像 木造彩色   鎌倉時代
増長天立像 木造   平安時代
持国天立像 木造   平安時代
阿弥陀三尊像 木造漆箔   鎌倉末期〜南北朝時代
狛犬 木造   鎌倉時代
変形四獣鏡 青銅製 重要文化財 古墳時代
画文帯同向式神獣鏡 青銅製 重要文化財 古墳時代
五鈴鏡 青銅製 重要美術品 古墳時代
袈裟襷文銅鐸 青銅製 重要美術品 弥生時代
瓶鎮柄香炉 銅製鍍金   平安時代
小刀子 銅製鍍金 重要美術品 平安時代
鰐口 銅製   平安時代
孔雀文磬 銅製   鎌倉時代
松梅鷹図屏風 紙本着色   江戸時代
唐花鴛鴦八稜鏡 銅製 重要文化財 平安時代
信貴形水瓶 銅製 重要文化財 鎌倉時代
透彫尾長鳥宝相華唐草文華鬘 銅製鍍金   鎌倉時代
龍頭幡頭 銅製鍍金 重要美術品 鎌倉時代
五鈷杵 銅製鍍金 重要美術品 鎌倉時代
八鋒輪宝 銅製鍍金 重要美術品 鎌倉時代
羯磨文五鈷鈴 銅製鍍金 重要美術品 鎌倉時代
宝塔嵌装舎利厨子 黒漆銅製鍍金   鎌倉時代
火焔宝珠形舎利容器 黒漆銅製鍍金   南北朝時代
龍文大皿 青磁   南宋時代
呉州赤絵 天下一皿 磁器赤絵   明時代
祥瑞 針木皿 磁器染付   明時代
天啓赤絵 仙人絵皿 磁器染付   明時代
銅製鍍金 重要美術品 室町時代
下蕪花入 青磁   南宋時代