仏像の姿形・作られ方は時代によって大きく変わりますが、印相(手の形)には決められた法則があります。そこでここでは、金剛館1階展示室に展示している仏像の印相について簡単ご紹介します。
 仏教の始祖・釈迦の姿を表した釈迦如来立像は、胸辺りで掌を前に向けた右手(施無畏印《せむいいん》)と、下に垂らして何かを与えようとするような仕草の左手(与願印《よがんいん》)を併せた印相を持っており、信者たちの願いを叶えるという意志を示しています。また薬師如来坐像もこの印相です。ただ、坐像ゆえに左手を膝の上に置き、薬壺を持っているのが特徴で、病苦の人々を救うという意志を表しています。
 もう一つ特徴的な印相を持つ仏像が阿弥陀如来立像です。右手左手ともに親指と人さし指で輪を作り、右手を胸の前に、左手を下に垂らしており、上品下生印《じょうぼんげしょういん》と言います。また、信者の臨終に際して極楽浄土から迎えに来る時の印相であることから、来迎印《らいごういん》とも呼ばれます。
 少し珍しい印相をしているのが宝冠阿弥陀如来坐像です。阿弥陀如来坐像は親指と人差し指で輪を作って左右の手を重ねるのが普通ですが、この像は輪を作らずに左右の手を重ねています。大日如来坐像などで多く見られるこの印相は禅定印と呼ばれるもので、阿弥陀如来坐像のなかでも宝冠付きの像でしばしば見られます。
 幾つかの印相をご紹介しましたが、それらは各仏様の本願(誓い)を表しています。手が口ほどに物を言う仏様の姿にもご注目いただければ幸いです。
 続く2階展示室では2011年度冬季企画展「龍と宝船」を行っております。
門松・しめ縄に年賀状など、新春の縁起物・風物詩は数多くありますが、現在ではほとんど見られなくなったものも幾つかあります。この度、四十七点を展示している「宝船」もそうしたものの一つです。
 日本では室町時代頃より武士階級を中心に、大晦日から元日にかけての夜に宝船を描いた紙(これ自体を「宝船」とも呼ぶ)を枕に敷いて寝ると良い初夢が見られると信じられてきました。この風習はやがて民衆にも広がり、大正・昭和にかけて「宝船」収集のブームまで起こりました。
 多種多様な図柄に年明けの喜びを描き込んだ「宝船」をご覧いただきながら、古くから伝わる新春の風習に触れていただければ幸いです。
 また2012年・辰年にちなんで、龍をかたどった美術品なども併せて展示しています。中国では、龍は力の象徴とされ、特に五本指の龍をモチーフとした品々は皇帝しか使用できなかったとされています。力強く天空を目指す龍の姿をご覧いただきながら、2012年の飛躍に想いを馳せていただければ尚幸いです。
 最後までごゆっくりご鑑賞ください。

冬期常設展2011 及び 冬季企画展「龍と宝船」 展示目録
品 名 形 状 指 定 時 代
梵鐘 銅造 重要美術品 室町時代
釈迦如来立像 木造 重要文化財 平安時代
浄土曼陀羅刻出龕 木造截金 重要文化財 平安時代
宝冠阿弥陀如来坐像 木造漆箔 重要文化財 鎌倉時代
阿弥陀如来立像 木造漆箔 重要美術品 鎌倉時代
阿弥陀如来立像 木造截金彩色 重要文化財 鎌倉時代
阿弥陀如来立像 木造漆箔   鎌倉時代後期
地蔵菩薩立像 木造彩色   鎌倉時代
増長天立像 木造   平安時代
持国天立像 木造   平安時代
阿弥陀三尊像 木造漆箔   鎌倉末期~南北朝時代
狛犬 木造   鎌倉時代
寶船図 版画   昭和12年
松梅鷹図屏風 紙本着色   江戸時代
唐花鴛鴦八稜鏡 青銅製 重要文化財 平安時代
信貴形水瓶 銅製 重要文化財 鎌倉時代
龍頭幡頭 銅製鍍金 重要美術品 鎌倉時代
龍頭幡頭 銅製彩色   室町時代
銅製鍍金 重要美術品 室町時代
銅製鍍金 重要美術品 室町時代
龍虎神人画像鏡 青銅製 重要美術品 古墳時代
盤龍鏡 青銅製   中国・後漢
虁鳳鏡 青銅製   中国・後漢
鯉耳花入 青磁   中国・南宋
龍文大皿 青磁   中国・南宋
呉州赤絵 天下一皿 磁器赤絵   中国・明
祥瑞 針木皿 磁器染付   中国・明
天啓赤絵 仙人絵皿 磁器染付   中国・明
萬歴赤絵 八角龍文水指 磁器染付   中国・明
繰口龍地文丸釜 鉄製   大正時代